前回おすすめした「間接法CF計画」は、肝になるのが損益計画です。損益計画は多くの企業で作成されていると思いますが、資金計画のための損益計画をしっかり作るという機会は少ないです。簡単に言うと、現実的な数値であるか?という事です。
コンサバやアグレッシブなどの表現があるように、数値計画は目的に応じて実行可能レベルがさまざま存在します。今回は2パターンの作成方法を解説いたします。
前期損益修正型とチャレンジ計画圧縮型
資金計画のための損益計画は、そもそも損益計画の有無で作成方法が異なります。
前期損益修正型(損益計画がない場合)
損益計画がないという場合は、前期の損益を基準に作成するのが良いでしょう。なぜ前期なのかというと、前期が一番今期実績に近いであろうという考え方からです。
コロナの影響などで前期があてにならない場合には、任意の事業年度を選択し基準値として使用してください。以下のように作成を進めるのがおすすめです。
- 基準損益計算書を月々の推移表に変換する。
- 売上高を単価×数量など分類し、修正が可能な状態にする。
- 売上に連動する費用科目(変動費)について、売上比率を乗ずる計算を行う。
- 手順3以外の固定費の中でも人件費は社員別、賞与・社保は給与連動の計算を行う。
- 手順3以外の固定費の中でも多額な費用は支払先別に分解しておく。
- 売上最小限、変動費最大、固定費最大の計画に修正し、利益額の確認。
- 基準損益と修正したい損益の乖離を確認し、この間で実行可能性を調整。
チャレンジ計画圧縮型(損益計画がある場合)
損益計画を作成している場合だと、実行可能レベルを計るのが難しくなります。なぜなら、大抵の場合、営業担当者が売上、現場担当者が原価や利益、経理担当者が費用のように、さまざまな人が考え計算された数値の集計が損益計画となっているためです。
つまり、作成者ごとに実行可能レベルが異なるため、きちんと根拠をヒアリングし調整する必要があります。手順は前期損益修正型と変わりませんが、調整のためのヒアリングは不可欠です。
資金計画のための損益計画の注意点
資金計画のための損益計画は、せっかく作った計画なので社内で共有したくなると思いますが、一つ注意点があります。
会社方針や今後の展望、社員の評価の対象となる損益計画と、今回作成している資金計画のための損益計画は目的が異なります。安易に実行可能性の高い損益計画が一人歩きしてしまうと、社員の目標意識が低くなる可能性もあります。
きちんと説明をしたうえで、チャレンジ性のある計画値と、最低限必要な計画値の意味を理解させる。そのうえで、社員各々が自己成長のための目標と、会社を維持するための目標を知ることができれば、透明性のある理想的な組織になるでしょう。
今回のテーマとは少し外れますが、資金計画のための損益計画を調整する中で、複数の人が同じ数値を見る体制作りができる点は、経営改善の一歩かもしれません。