コロナ関連の特別融資枠を活用した企業は、非常に多いと思います。私たちもこの2年あまりで一番受けた質問が「いくら借りればいいですか?」というものだった気がします。この質問に対しての答えが、今回の表題の主たる話になります。
お金を借りる判断基準
先に答えを言うとケースバイケースという最低な回答になりますが、以下の判断基準を元に導き出すケースバイケースとして考えていただければと思います。
- 最低必要資金
- 返済可能額
- 調達可能額
最低必要資金
コロナ禍においてこれまでの常識が通じなかったのが最低必要資金です。当然業績不振により先の読めない会社は多く目の当たりにしましたが、今回は、借りる側・貸す側・アドバイスする側の全員が何を基準に「いくら借りなくてはいけないのか」を計算すればいいのか、困惑していたように感じます。
この期間に私が考えていた計算方法をご紹介します。計算に必要な考えは二つです。
・どれだけ悪くても必ず達成できる売上(全く読めないのであれば0もあり)
・倒産、事業転換など大幅な方向転換を行うのに必要な期間
つまり、最低限の売上を何か月(何年)続けるだけの資金が必要なのかを計算するのです。
コロナがなければ、ここまで思い切った協議をできなかったかもしれませんが、このような考えで即実行できるようなレスポンスが求められるようになったのは明らかです。
返済可能額
最低必要資金を計算すると、「いくらでも借りられるだけ借りる」のような発想になる方もいらっしゃいます。現に、そのような話を経営者がしているのを何度も耳にしました。
私の顧問先でも借りられるだけ借りたいと相談を受けましたが、「何年で返すつもりですか?」「であれば、年間○○円の利益を出すのが3年後ですね」とあえて厳しい条件になることを伝えました。
借りるしかない、借りるべきというのはもちろんわかっていますが、これまでの借入と同じで返す時がやってきます。その分必要な利益があるわけで、その時に今よりも厳しい状況も考えられるわけです。その点だけ思い出してほしいという意味で、自社の返済可能額をいつも考えてください。
ここではあまり複雑な計算をする必要はないと思います。
返済可能額≒税引後利益+償却費-投資額(予測される投資額)
このぐらいの計算で十分だと思います。
調達可能額
最低必要資金や返済可能額が把握できたところで、「貸せません」と言われたら元も子もありません。高い自己資本比率や担保性の高い不動産があれば、ある程度の調達力はわかるでしょうし、そのような会社は金融機関からの営業を受けるでしょうから、特に問題は無いと思います。
一番怖いのは、自社の調達可能額を把握していないがゆえに突然借りられなくなることです。だからと言って、金融機関が正確に「現時点でのご融資可能額」を教えてくれるわけではありません。
資金的に厳しい会社にとって調達可能額が分からない経営は、すべての投資に対して消極的にならざるを得ない経営となります。ではどうやって、調達可能額を把握するのか。私がよく行うのは、「複数パターンの資金計画」を「複数の金融機関」に「できるだけ早く」提出することです。
複数パターンの資金計画
「複数パターンの資金計画」は必要資金が異なる3~5パターンを作ることで、どの計画が一番納得しているかを判断するためです。金融機関から見ても貸したい気持ちと、返済可能性というバランスの中で融資を行うわけで、どの計画書のパターンが一番その基準を満たしているか、そこでわかることも多くあります。
複数の金融機関
「複数の金融機関」は相見積もりというわけではありませんが、金融機関の担当者レベルでも判断基準が異なる上、金融機関の重点施策が時期によって異なることもあります。できるだけ複数の提示を比較し、正しい自社の評価をするべきだと思います。
できるだけ早く
「できるだけ早く」は結局ギリギリになってしまうと、借りるしかないから借りれる条件であれば何でもいいという風になってしますからです。私としては最低でも6か月前、できれば1年前には金融機関に融資の相談をすべきです。
1年前には予測ができないから相談のしようがないと言われる経営者がいますが、それはありえません。完全に初めての資金難であればわかりますが、ほとんどの経営者は資金悪化を経験しており、予測はつくはずです。
資金計画はできるだけ早く、できるだけ厳しく
「できるだけ早く」は、資金の悩みの中でも一番の問題です。資金計画は、精神的に疲れてしまう為、気持ちの良い経営の邪魔になると思って避ける方をよく見受けます。私自身、夏休みの宿題などを前倒ししてできるタイプではありませんでしたが、この仕事をしている今ははっきりと言えることがあります。
「資金計画はできるだけ早く、できるだけ厳しく計算しておくのが最善」