資金不足に陥ると「売上を上げなければ」「経費削減をしなければ」「生産性を上げなければ」など、経営方針自体が数値の改善に直結するものに変わりがちです。それ自体が悪いわけではありませんが、「数値に左右される経営方針が社員に伝わるのか」というと大きな疑問が残ります。
本来経営方針は、経営理念(会社の大きな目的)やビジョン(目的達成のための目標)に準じるべきで、資金不足の状態から導き出される経営方針では、求心力が見いだしづらいのではないでしょうか。
今回は、ぶれない経営方針を掲げるために、資金の対策としてどれだけの戦略的選択肢・確認すべき項目があるのかを解説します。
資金改善は損益改善だけではない
資金を改善するために確認すべき項目は損益以外にも多々あり、中分類程度の分け方だけでも12種類あります。
- 利益(損益)
- 税金(消費税・法人税等)
- 在庫(商品、製品、仕掛品等)
- 売上債権(売掛金・受取手形等)
- 仕入債務(買掛金・支払手形等)
- その他資産(未収・立替・仮払等)
- その他負債(未払・仮受等)
- 固定資産(建物・機械等)
- 投資(保険積立金等)
- 固定性預金(定期預金等)
- 借入金(短期借入金・長期借入金)
- 長期債務(長期未払金・リース債務等)
上記の項目でまず感じてほしいのは、利益以外に11の資金項目がある点です。この11項目の中に自社の資金改善のために見直しが必要なものは含まれていませんか。全くなければ割り切って損益改善に踏み切るしかないかもしれませんが、ほとんどの場合が気づいていないだけで改善できるポイントは残されているはずです。
③~⑫に関しては、「自社で金額大きいか」「変動が大きいか」の2点を確認してみてください。仮に該当する項目があれば資金改善のチャンスになります。この後は取引先、投資予定、金融機関などとの調整が必要です。
私がこのチェック方法を薦める理由は、損益に影響されない改善が可能だからです。最初に述べた「売上を上げなければ」「経費削減をしなければ」「生産性を上げなければ」に依存しない資金改善ができます。
チェック項目一例
金額の大きさ | 金額の波 | |
---|---|---|
在庫 | 商品、製品、仕掛品などの残高が大きい | 在庫金額の季節変動が大きい |
売掛金 受取手形 | 回収の期間が長い | 売上の季節変動が大きい |
買掛金 支払手形 | 支払の期間が短い | 仕入等の季節変動が大きい |
貸付金 仮払金等 | 大きな金額が固定化している | 1年に1回以上大きな変動がある |
仮受金 未払金等 | 大きな金額が固定化している | 1年に1回以上大きな変動がある |
固定資産 | 定期的な資産購入がある | 年によって変動が大きい |
投資 | 目的が不明確な投資がある(必要保障を超えた保険等) | 決算月などに偏って発生する |
定期預金 | 目的別に分けられていない | 積立・解約のルールがない |
借入金 | 返済額が大きく、返済期間が短い借入がある | 一括償還が条件のものがある |
割賦 リース | 支払額が大きく、使用期間が長い割賦・リースがある | 残価設定されたリースがある |
本記事で伝えたいこと
今回の記事は、資金改善をするためのノウハウをお伝えすることだけが目的ではありません。実は裏テーマがあり、
- 資金改善を現場の業績のせいにしてはいけない
- 業績が悪かろうとも資金改善は計るべき
- お金を中心とした経営方針を立てないでほしい
という私の想いも含まれています。
本記事をきっかけに、自社の資金に対して考えていただければと願っております。