※この記事は2021年7月執筆時点の情報です。詳しくは各省庁のホームページをご覧ください。
急速に進むDX化や、新型コロナウイルス感染拡大により、ビジネスモデルの転換を迫られる事業者が増えています。しかし何から手を付けるにしても費用が必要となりますが、補助金を使えばコストを抑えて業務改善や新規事業をスタートさせられます。
今回はこうした際に活用したい「ものづくり補助金」について、中小企業の経営コンサルティングを行っているIGブレーンが解説します。
DX化やコロナウイルス対策にも活用可能!
ものづくり補助金とは?
ここからは、ものづくり補助金制度が設立された目的や概要、対象となる事業規模について紹介します。
ものづくり補助金の概要・目的
中小企業や小規模事業者は、働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入など、さまざまな制度変更に対応していく必要があります。ものづくり補助金は、こうした背景を踏まえ、中小企業や小規模事業者が試作品開発や生産プロセスの改善、革新的なサービス開発を行う際の経費を支援する補助金です。
中小企業庁の所管で、正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と言います。
担保や保証人は必要なく、原則として返済する必要はありません。中小企業に対して支援プログラムを開発・提供する事業者に対しても「ビジネスモデル構築型」という形で補助を行っています。ビジネスモデル構築型は、個別の企業を支援するのではなく、複数の中小企業が関与する面的支援を想定しています。
ものづくり補助金の補助率は1/2~2/3で、一般型は上限1000万円、グローバル展開型は上限3000万円、ビジネスモデル構築型は1億円です。2021年度からは、新型コロナウイルス対応の「低感染リスク型ビジネス枠」が創設されたほか、必要な添付書類の削減、手続きのデジタル化推進などの変更・改善が行われました。
一般型とグローバル展開型は3カ月おきに締め切りがあり、通年で公募を受け付けていますが、ビジネスモデル構築型は通年公募ではなく、随時公募を行っています。採択規模や公募回数は申請状況などを踏まえて決定されています。
補助の対象となる経費は、詳細に定められており、グローバル展開型では「海外旅費」、低感染リスク型ビジネス枠では「広告宣伝・販売促進費」が追加されているのが特徴です。
ものづくり補助金の対象者
ものづくり補助金で「一般型」「グローバル展開型」の対象となるのは、本社か補助事業の実施場所を日本国内に有する中小企業、特定非営利活動法人です。
ものづくり補助金での中小企業の定義は、中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律第2条第1項、「中小企業等経営強化法」第2条第1項に規定する者とされています。
特定非営利活動法人についても、法人税法施行令第5条第1項に規定される34事業を行っていることなど、さまざまな条件があります。
補助の対象外となるのは、
・発行済株式の総数または出資価格の総額の1/2以上を同一の大企業が所有している中小企業
・発行済株式の総数、または出資価格の総額の2/3以上を大企業が所有している中小企業
・大企業の役員または職員を兼ねている者が役員総数の1/2以上を占めている中小企業
などです。
その他にも資本金や従業員数に制限があるため、自社が対象になるかどうかについては確認が必要です。「ビジネスモデル構築型」の対象となるのは、中小企業の経営革新を持続的に支援可能な法人です。法人格を持たない任意団体や地方公共団体、個人事業主は対象外とされています。
ものづくり補助金の3つの種類とは
ものづくり補助金には、一般型、グローバル展開型、ビジネスモデル構築型の3種類があります。それぞれの概要、対象経費、補助率などについて説明していきます。
一般型
一般型は、中小企業などが行う「革新的な製品・サービス開発」または、「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備やシステム投資などを支援するものです。補助金額は100万~1000万円で、単価50万円(税別)以上の設備投資が必要です。
一般型には「通常枠」と「低感染リスク型ビジネス枠」があり、通常枠の補助率は中小企業で1/2、小規模企業者・小規模事業者で2/3と定められています。
低感染リスク型ビジネス枠では2/3が補助されます。
補助の対象となる経費は、機械装置、システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費などで、低感染リスク型ビジネス枠ではこれに加えて特別に、広告宣伝費と販売促進費が認められます。
低感染リスク型ビジネス枠で不採択になった事業者に対しては、通常枠で優先的に採択される点も特徴的です。
グローバル展開型
グローバル展開型は、中小企業などが海外事業の拡大や強化を目的として行う「革新的な製品・サービス開発」または、「生産プロセス・サービス提供方法の改善」のために、設備・システム投資などを支援します。
海外直接投資、海外市場開拓、インバウンド市場開拓、海外事業者との共同事業のいずれかに当てはまることが条件です。補助金額は1000万~3000万円で、一般型同様、単価50万円(税別)以上の設備投資が必要です。
対象となる経費は、一般型と基本的に同じで、海外旅費が特別に追加されています。補助率は中小企業者が1/2、小規模企業者・小規模事業者が2/3です。
ビジネスモデル構築型
ビジネスモデル構築型は、30者以上の中小企業を支援するプログラムの開発、提供を補助するものです。中小企業が「革新性」「拡張性」「持続性」を有するビジネスモデルを構築できるような取り組みが求められます。
補助事業が終了した後、1年で支援先企業の80%以上が事業計画を実行できるプログラム内容であることが要件となっており、終了後1年時に事業成果の報告が求められます。
補助率は、ものづくり補助金の定義で定める大企業の場合1/2、それ以外の法人は2/3で、補助金額は100万~1億円です。対象経費は、人件費、機械装置・システム構築費、旅費、謝金、会議費、消耗品費など10種類が定められています。
ものづくり補助金の申請方法とスケジュール
ものづくり補助金の申請方法について詳しく説明していきます。
事業計画書の準備
事業計画書はものづくり補助金の採択を決める重要な書類です。書類の様式や記載項目について知り、万全の準備を整える必要があります。
公募要領や申請書の準備
ものづくり補助金の2020年度の採択率は31~62%と高いものではなく、採択されないケースもあります。採択の可否は公募の際に提出する書類によって審査されるため、十分な準備期間をもって用意をしましょう。
申請には「事業計画書」「賃金引き上げ計画の表明書」「決算書」などが必要です。ものづくり補助金は全国中小企業団体中央会が事務局として管理・運営を行っています。公募要領や申請書などは、中小企業団体中央会のホームページに掲載されるので、必ず最新のものをダウンロードしましょう。
過去の公募要領も掲載されていますが、細かな点が変更されているので最新のものが公開されるまでの参考程度にとどめておくとよいでしょう。
事業計画書の様式は自由で、A4サイズ10ページ程度が目安です。そのほか、任意の資料を提出することで加点の対象とすることができます。
なお、2021年度の場合、公募開始日から申請開始日までは約2カ月間、申請締め切り日まではさらに約1カ月間が設けられています。公募開始から申請締め切りまでを約3カ月間と見込んで、早めにチェックしておくと安心です。
ちなみにビジネスモデル構築型は、公募開始日と申請開始日が同日で、申請締め切り日まで約2か月間となっています。
事業計画書の内容とポイント
事業計画書の項目は「補助事業の具体的取り組み内容」「将来の展望」「会社全体の事業計画」の3つです。それぞれに記載項目が定められており、内容は年度によって替わります。
例えば「補助事業の具体的取り組み内容」の記載項目としては、事業の現状や課題と解決策、実施体制などが考えられます。審査委員会に補助を申請する事業の必要性や、具体的な取り組み、現状について分かりやすく伝えることができる記載方法を意識することが大切です。
取り組み内容に触れる際は、「課題」と「解決策」を対応させ、箇条書きで簡潔に書いたり、写真や図表を入れたりすると伝えたいことが明確になります。
「将来の展望」は、事業の市場や事業効果、「会社全体の事業計画」は5カ年計画や付加価値額、給与支給総額などの算出根拠を示します。付加価値額や給与支給総額などの数値は補助要件になっているので、整合性のある数値を記載することが大切です。
補助金事務局に電子申請
ものづくり補助金の申請はすべて電子化されており、経済産業省が提供する補助金申請システム「Jグランツ」で行います。申請に当たっては「GビズID」の取得が必要です。GビズIDは複数の行政サービスにアクセスできる法人・個人事業主向けの認証システムで、gBizIDプライム、gBizIDメンバー、gBizIDエントリーの3種類のアカウントがあります。
プライム:会社代表者か個人事業主が登録でき、書類審査が必要
メンバー:プライムを取得している組織の従業員が登録できる
エントリー:事業をしている全ての人が対象
メンバー、エントリーのいずれも書類審査は不要です。
補助金の電子申請にはgBizIDプライムが必要なので、補助金への公募を検討しているなら早めに申請を行いましょう。gBizIDプライムは審査が必要なこともあり、2021年6月現在、IDの発行までに3週間以上を要しています。
プライムアカウントの申請は、印鑑証明書と登録印鑑を押した書類を運用センターに郵送して行います。通常時でも、発行までに2~3週間が必要です。
結果通知・事業開始
審査結果は採択、不採択に関わらず、申請者全員に対して通知され、採択された案件については、受付番号、商号または名称、事業計画名などが公表されます。
採択後には、事業完了までの手続きなどについて説明会や個別ヒアリングが行われます。事業計画書の内容などについて詳しく説明できるように準備しておきましょう。
次に、補助金の交付を再度申請します。採択審査の際に提出した事業計画書を元に、実際に必要な経費の見積書などを添え、具体的な金額や事業内容に基づいた確認を受けるものです。
この審査を通過なければ補助金は公布されず、事業を始めることができません。交付決定通知書が届いてはじめて、事業をスタートできるため、発注や契約は通知書を待って行うようにしましょう。
中間監査・報告
補助事業開始後に、事務局が必要と認めた場合は中間監査を受けるケースがあります。中間監査に当たって報告書の提出が必要な場合は作成しなければなりません。
補助事業の報告
補助事業が終了したら、補助金交付の対象となった経費や事業内容についての実績報告書を作成し、提出します。報告書の提出後には、補助金が適切に使用されているかを確認するため、事務局による実地の確定検査が行われます。
補助金の交付
報告書と確定検査に問題がなければ公布される補助金の金額が決定し、支払いを受けることができます。
ものづくり補助金の採択につながるポイント
ものづくり補助金が採択されるかどうかの審査は、外部有識者で構成される審査委員会が事業計画書などを評価して行います。どのような点を評価するかについては、公募要領に記載されている審査項目を確認しましょう。年度によって内容は多少異なりますが、求められるポイントは大筋で同じです。
特に注意したいのは「技術面」「事業化面」「政策面」の3つです。ものづくり補助金は、革新的なサービスであることや生産プロセスが改善されることなどを条件とした制度なので、事業計画書を作成する際にも審査項目と制度の目的を関連付けるよう意識するとよいでしょう。
例えば、
技術面:製品やサービスの開発が革新的であるかどうか
事業化面:企業の収益性や生産性の向上が見込めるか
政策面:国の政策と合致しているかどうか
といったポイントを押さえて記載します。
審査は申請書の内容だけでなく「加点項目」の取得を加味して行われます。2021年度の加点項目は、「成長性加点」「政策加点」「災害等加点」「賃上げ加点等」の4つです。
成長性加点:経営革新計画承認書
政策加点:開業届、または履歴事項全部証明書(創業・第二創業の場合)
災害等加点:事業継続力強化計画認定書
賃上げ加点:特定適用事業所該当通知書(被用者保険の適用拡大を行う場合)
などが必要です。
ビジネスモデルの転換にものづくり補助金の活用を
ビジネスモデルの転換や改善を考える際に大きな助けとなる「ものづくり補助金」ですが、事業計画書の作成や補助金交付の申請でつまずいてしまい、採択を通過できなかったり事業を始められなかったりするケースも見受けられます。
ものづくり補助金の採択審査を通過するためには、事業の展望について明確なビジョンを持つことも重要です。
補助金の申請を検討しているなら、事業の方向性や補助金の活用方法について、IGブレーンへ気軽に相談してみてはいかがでしょうか。無料Zoom相談も行っています。