創業60年以上の飲食業に訪れた業績低迷。一年で黒字転換し、財務体質の改善に成功

「このままでは、もうダメだ!」
先代の社長が体調を崩したことをきっかけに、先代に代わり経営の舵取りを任された老舗食品・飲食業の後継者。経営者としての自覚を持って経営の立て直しを決意したことで、黒字転換に成功した経営改善の事例をご紹介します。

概要と抱える課題

会社名:非公開
業種:創業60年以上の食品・飲食業
商圏:首都圏
業務内容:惣菜・弁当販売を行い、レストラン展開も行う従業員100名程度の企業

業績は低迷する一方で、改善すべき課題がわからない

創業当初から順調に規模を拡大していきましたが、ここ数十年になってから業績が低迷している状況でした。「過去の蓄積でなんとか経営していたが、このままでは危険。会社を守るためにも経営を立て直す必要がある」と後継者は考えていたそうです。

IG 宮﨑

問題は山積みだけど、どこから解決すべきなのかがわからない…。

そんな悩みを抱える経営者は多いですが、こちらのクライアント様の場合は、利益体質への転換が急務な状況でした。

経営計画を自らの意思で作成し、過去と未来を明らかに

同社には、まず「経営計画の作成」から実施していただく必要がありました。なぜなら、限られた経営資源をどのように分配し、どこに集中的に投下するのかを検討していく必要があるからです。

しかし、自分の意思で経営計画を作成するには財務状況の理解が不可欠です。そのため、税理士とマンツーマンで財務諸表の読み方を勉強してもらい、自社の財務状況の把握と経営計画について理解を深めていきました。

IGブレーンの経営計画では、

・売上
・経常利益
・社員数

から5年後のビジョンを描きます。

「売上を伸ばし利益を拡大するためには、人員をどのくらい確保する必要があるのか?」という視点で検討していただきました。この視点であるべき姿と現状の差を埋めていこうとしたときに、「材料費のコストダウン」と「季節変動への対応」の大きく2つの課題が浮かび上がりました。

材料費のコストダウン

部門ごとに仕入れ先が異なり、かなりムダなコストになっていた。

同社では、食材の製造やレストラン、出前、店頭販売、デパートのテナントなど各部門ごとに分かれており、それぞれが発注を行っていました。それを一括仕入れに移行させるだけでもかなりのスケールメリットが期待できました。

また、仕入れ先に対して、長年の付き合いの関係で仕入れ値の交渉をほとんど行っていない点も懸念事項として挙げられました。

季節変動への対応

ギフト需要の高まる8月・12月。その時期以外の対策を検討していなかった

同社の商品は、お中元の8月とお歳暮の12月以外で利益を出せておらず、いわば2勝10敗という状況でした。こうした売れ行きの変動はあらかじめ対策が可能なため、計画的な販売戦略を立てることになりました。目標として6月、9月、11月も勝ちを狙い、5年後に5勝7敗まで持って行くことを目標にしました。

経営計画に基づいた施策で、初年度から黒字転換を実現

経営計画を作成後、単年度の行動計画に落とし込んで実行していただきました。1年目は原価管理を徹底させ、発注窓口を一本化して相見積もりをとるとともに、部門別の損益を算出するようになりました。

また季節変動への対策も実施し、これまで注文を待つだけだったものを「法事慶事の案内」や「通販の強化」、毎月のイベント開催など法人需要の掘り起こしを行いました。

施策実行で最も力をいれたのは、従業員の意識改革

コストダウンにせよ売上増加にせよ、1%の差異でも元々の数字が大きければ膨大な額になります。その重要性を実感してもらうために、「月例会議」を実施し徹底した議論を行ってもらい、危機感を継続的に共有してもらいました。その結果から、弊社サービス導入の初年度から黒字転換を実現しました。

導入2年目以降はムダな経費の削減だけでなく、発生を抑えた

業務・宣伝費用・付き合いなど、さまざまなムダな経費の発生を抑えた。

黒字転換後は、固定費の見直しを徹底的に行いました。ムダな経費の削減だけでなく、経費を発生させないという意識づけに努めました。小さなことでいえば、水道光熱費の発生を抑えるために、こまめな節電・節水、配達や営業車両の燃料費を抑えるために、アイドリングしない、急発進・急加速をしないといったことまで実施しています。

また、商売上の「お付き合い」もできるだけやめるようにしました。中小企業では、社長勘定など仮払金がキャッシュフローを悪化させる原因になっていることも少なくありません。そのため、定期的な集まりへの参加会費なども削減しました。

さらに、同社では毎年催されるデパートなどの物産展への出展も控えました。それまでの実績を精査した結果、ほとんど赤字だったのです。さらに、テレビコマーシャルも本当に必要であるものだけに絞りました。

経営陣だけでなく各部門長も参加し、「やらされ感」をなくす

目標の達成状況を数値化し、毎月会議を実施。

3年目以降は会社の数字をオープンにしたことにより、部門長が自部門の単年度計画を作成するようにしました。部門別に意見を集約させ数値目標を設定し、毎月会議を行い数値目標の検証を行い、そのズレを次月以降でどうのように埋めていくのか、具体的な行動に落とし込んだアクションプランを立案(予実管理)しています。

IG 宮﨑

単年度計画は経営陣あるいは会計事務所だけで作成すると、現場に「やらされ感」が漂ってしまいます。「自分がやらなくて、誰がやれるのか?」という強い当事者意識をもったメンバーを育成し、その人たちが周囲を巻き込み、組織レベルで意識の高まりがあって、はじめて目標を確実に達成できるようになるのです。

目標管理の体制が確立され、自己革新に成功

弊社サービス導入から10年、同社は大きく変貌しました。初年度の黒字転換で好スタートを切り、そのあとも順調に自己革新の道を歩んでいます。

収益構造の根本的な改善とともに、財務体質も著しく改善されました。金融期間の格付けがアップし、借入金利は2%以上低下しました。レストランの改装資金などを調達することも可能です。季節変動への対応では、当初の目標だった「5勝7敗」を上回る「6勝6敗」に改善されました。

なにより、目標管理の体制が確立されたことで、持続的な発展が見込めるようになりました。毎月目標に対する現状の数値検証を行っているため、社内に目標管理の「習慣」が根づき、従業員はその成果を肌で感じられるようになりました。

今後の目標は、「不易流行を見極め、自己革新を図る」

不易流行とは、変わることがない部分を忘れず、変化を取り入れていくことを指します。同社は不易流行を見極めながら、常に自己革新を図っていくと決意を新たにしています。それは、会社方針にもはっきりとあらわれています。

<同社の今後の会社方針>
・徹底して味で勝負する
材料費のコストダウンは図りつつ、ダシにはこだわりつつ、材料の質は落とさない。

・固定客を増やしていく
地元の顧客を大切にして、リーズナブルな価格で商品を提供する。

・物販を増やしていく
新工場を建設し、製造力を強化することで店頭・テナント・通信販売を拡大する。

IG 宮﨑

自己革新に成功した最大のポイントは、先入観を持たずにこれまでの経営状況をあらゆる数値から見直し、目標管理とPDCAサイクルを徹底させたことにあるでしょう。

この記事を書いた人

IGブレーン編集部

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